建設業の新規事業で、いちばん始めやすいアイデアは何か。
答えは、お客様からすでに頼まれていて、今は断っている「隣の工事」を、自社の社員で受けられるようにすることです。
足場、設備、清掃、不動産の管理、工務店。どの会社にも、本業の現場で「ついでにこれもできない?」と頼まれる仕事があります。
その代表が、壁紙(クロス)と床の貼り替えです。
この記事では、建設業とその周辺の会社の経営者に向けて、次のことをお伝えします。
なぜ遠い新分野より、隣の工事のほうが始めやすいのか
どの業種が、どんな工事を自社に取り込めるのか
始める前に確かめる許可・責任・人の3つ
未経験の社員を、どう育てて現場に出すか
内製化しなくてもよい会社の見分け方
【目次】
新規事業のアイデアを集めた一覧は、世の中にたくさんあります。
デジタル化、海外進出、農業、再生可能エネルギー、中古住宅の買取再販。どれも可能性のある分野です。
ただ、読み終えたあとに「で、うちは何をやればいいのか」と手が止まる社長は少なくありません。
理由ははっきりしています。
一覧に並ぶアイデアの多くは、今のお客様も、今の社員の腕も使えない分野だからです。
新しい分野に出るには、新しいお客様を探し、新しい人を雇い、新しい設備を買う必要があります。本業を回しながら、それを全部そろえるのは大仕事です。
その一方で、本業の現場ではこんな声が出ています。
「設備の修理のついでに、はがれた壁紙も直してもらえない?」
「退去後の掃除と一緒に、クロスも貼り替えてくれると助かるんだけど」
「足場を組んでもらった家の、内装のリフォームもお願いできる?」
多くの会社は、こうした依頼に「うちは専門外なので」と答えるか、知り合いの業者に回しています。
回した先の業者が、そのお客様と直接つながっていく。そんな場面を見てきた社長も少なくないでしょう。
新規事業のタネは、遠い分野ではなく、毎月断っている依頼の中にあります。
建設業の新規事業として最初に検討したいのは、隣接する工事の内製化です。
内製化とは、これまで外の業者に出していた工事や、断っていた工事を、自社の社員で受けられるようにすることです。
社員が本業に加えて別の工種もこなせる状態を、建設の現場では「多能工」と呼びます。
隣の工事から始める理由は3つあります。
1つ目。お客様をゼロから探さなくてよい
依頼はすでに来ています。まず断っていた依頼を受けるだけで、売上が立ちます。
2つ目。現場の段取りをすでに知っている
建物に入る手順、住んでいる人への配慮、近隣へのあいさつ。本業で身につけた現場の作法は、隣の工事でもそのまま使えます。
3つ目。お客様との接点が増える
1回の訪問で2つの工事を受けられれば、お客様は業者を探す手間が減ります。次に困ったとき、最初に声をかけてもらえる会社になれます。
隣の工事の中でも、壁紙と床の貼り替えは取り組みやすい工事です。
賃貸住宅の入居者が入れ替わるとき、住まいの模様替えのとき、店舗やオフィスの改装のとき。建物がある限り、貼り替えの依頼は繰り返し生まれます。
新規事業のアイデアを、本業からの距離で分けて比べてみます。
ここでの評価は、建設業とその周辺の会社が検討するときの目安として整理したものです。公的な統計で測った数字ではない点にご注意ください。
お客様
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):ゼロから探す
近い新規事業(例:内装の内製化):今のお客様からの依頼がある
社員
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):新しく雇うことが多い
近い新規事業(例:内装の内製化):今の社員を育てる
初期にかかるお金
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):設備・拠点・広告が必要になりやすい
近い新規事業(例:内装の内製化):道具と研修費が中心
本業との関係
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):別の事業として回す
近い新規事業(例:内装の内製化):本業の現場で一緒に受けられる
撤退するとき
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):設備や拠点が残る
近い新規事業(例:内装の内製化):身についた技術は本業でも使える
気をつけること
遠い新規事業(例:農業・海外・新しいサービス):市場の読み違い
近い新規事業(例:内装の内製化):品質と引き渡し後の責任
遠い新規事業にも、大きく伸びる可能性があります。
ただ、本業を持つ中小の会社が最初の一歩として選ぶなら、失敗したときに失うものが小さく、うまくいけば本業も強くなる近い新規事業のほうが、踏み出しやすくなります。
合わなかったときも、社員が身につけた下地の処理や採寸の技術は、本業の補修や手直しに生きます。
内装の貼り替えは、外注先に頼めば済む仕事でした。これまでは、それで回っていました。ただ、これからは外注先そのものが見つかりにくくなっていきます。
国土交通省の資料「建設業を取り巻く状況等について」によると、令和7年の建設業の就業者のうち、55歳以上は36.6%、29歳以下は11.9%です。
およそ3人に1人以上が55歳以上で、若い人は1割ほどにとどまっています。今、現場を支えている職人さんが引退していったとき、その穴を埋める若い人が少ない状況です。
人手が減れば、職人の手間賃は上がります。
国土交通省が公共工事の積算に使う「公共工事設計労務単価」は、令和8年3月から適用された改定で、全国全職種の加重平均が25,834円、前年度より4.5%高く、14年連続の引き上げとなりました。
これは公共工事の単価で、民間の内装工事の相場とは別の数字です。それでも、職人の手間にかかるお金が年々上がっている流れは読み取れます。
ここから言えることは2つです。
外注に頼る会社は、頼める先が減り、頼む値段も上がっていく
自社で受けられる会社は、周りが断る依頼を受けられる
外注先が見つからずに困っているのは、同じ地域の同業も同じです。
だからこそ、自社の社員が隣の工事をこなせることが、そのまま選ばれる理由になります。
隣の工事は、本業によって変わります。
壁紙と床の貼り替えを軸に、業種ごとに取り込みやすい工事を整理しました。
足場・鳶
よく頼まれる隣の工事:足場を組んだ建物の内装の貼り替え
取り込んだあとの形:元請けを通して、内装も自社の社員で受ける
設備の修理・点検
よく頼まれる隣の工事:修理で傷めた壁紙の補修、水回りの床の貼り替え
取り込んだあとの形:修理と補修を1回の訪問で終える
清掃・ハウスクリーニング
よく頼まれる隣の工事:退去後の壁紙の汚れ・はがれの貼り替え
取り込んだあとの形:掃除と原状回復を一貫して受ける
不動産の管理
よく頼まれる隣の工事:退去後の原状回復工事
取り込んだあとの形:空室の期間を短くする
工務店・リフォーム会社
よく頼まれる隣の工事:小さな内装の手直し、貼り替えだけの依頼
取り込んだあとの形:外注の待ち時間をなくす
大工・ふすま・左官
よく頼まれる隣の工事:自分の工事の後の仕上げ
取り込んだあとの形:仕上げまで一人で完結する
一覧だけでは、自社の場合の姿が浮かびにくいかもしれません。業種ごとに、取り込んだあとの仕事の流れを少し具体的に見てみます。
足場を組む現場では、外壁の塗装や屋根の工事と同じ時期に、住む人から「中もきれいにしたい」と相談されることがあります。
これまでは、その相談を元請けやリフォーム会社に回していた会社が多いでしょう。自社に内装のできる社員がいれば、外の工事が終わる時期に合わせて、内装の貼り替えも受けられると元請けに伝えられます。
元請けの現場で住む人から直接相談を受けたときは、元請けを通して話を進めるのが基本です。元請けの仕事を横から取る形になると、本業の信頼を失います。
鳶の仕事で身につけた、高い所での作業や段取りの感覚は、天井の壁紙を貼る作業にも生きます。
水回りの修理では、配管を直すために壁や床をはがすことがあります。
修理が終わったあと、はがした部分の壁紙や床をきれいに戻すところまで自社でできれば、お客様は別の業者を呼ぶ必要がなくなります。1回の訪問で終わるので、住む人の負担も小さくなります。
賃貸住宅の退去後の掃除を受けていると、汚れやはがれで掃除では戻らない壁紙に出会います。
そこで貼り替えまで受けられれば、管理会社や大家さんは、掃除と原状回復をまとめて1社に頼めます。空室の期間が短くなるので、頼む側にとっても助かる形です。
管理する物件の退去が出るたびに、原状回復の工事を手配していることでしょう。
内装の職人の予定が合わず、次の入居者を迎えるのが遅れた経験はないでしょうか。自社の社員で小さな貼り替えに対応できれば、手配の待ち時間を縮められます。
Kitano壁紙スクールがサイトで公開している受講風景には、実際にこうした本業を持つ会社の方が登場しています。
鳶職の会社の社員さんは、自社の業務拡大を目標に15日間の講習を受けました。
最終日には、6畳一間の壁紙を、段取りから貼り込みまで一人で仕上げています。ご本人は受講風景の中で、こう振り返っています。
「前日までは『本当に一人でやり切れるだろうか』と大きな不安もありましたが、いざ始まってみると手が自然に動き、最後まで貼り切ることができました。」
設備のメンテナンスを仕事にしている方の受講もあります。
スクールの紹介では、設備の修理と合わせて「壁紙も少し直せれば」というニーズから受講する方が増えている、と書かれています。
清掃業を営む方は、自社で壁紙の施工まで一貫して請け負えるよう、事業の拡大を見据えて受講しました。
引越し業を営む会社の方も受講しています。スクールのコラムでは、作業中に傷めた壁紙に自社ですぐ対応できるようになり、閑散期を原状回復工事という新しい収益源に変えた例として紹介されています。
建設の周辺ではない会社が、新しい事業として社員を送り出した例もあります。法人の新事業の担い手として、元エステティシャンと元美容師の2名がパーフェクトコースを同時に受講しました。
清掃と内装を一緒に受ける考え方に関して詳しく解説した記事はこちらです。
「清掃+内装」のワンストップ受注が、客単価と利益率を向上させる
隣の工事の内製化は、小さく始めるのが基本です。ここで全体の流れをつかんでから、次の章以降で1つずつ詳しく見ていきます。
次の5つの段階で進めると、失敗したときの損を小さくできます。
1
やること:過去半年に断った依頼、外注に回した依頼を数える
確かめること:月に何件あるか。どんな工事か
2
やること:担当する社員を1人か2人選ぶ
確かめること:本人の意欲。本業の穴をどう埋めるか
3
やること:集中研修や見習いで技術を身につける
確かめること:一人で一部屋を仕上げられるか
4
やること:最初に決めた値段で、今のお客様の小さな工事から受ける
確かめること:仕上がりへの評価。かかった時間
5
やること:値段と受ける範囲を見直して、広げる
確かめること:利益が残るか。許可が要る規模に近づいていないか
5つの中で最初に手をつけてほしいのは、1の段階です。
「なんとなく頼まれている気がする」で済ませず、実際に数えることから始めます。
月に1件なのか、月に10件なのかで、育てる人数も、かけてよい研修費も変わります。この数字が、新規事業の計画のもとになります。
4の段階で小さな工事を選ぶのは、仕上がりを確かめやすく、万一のときも直しやすいからです。具体的な進め方は、この記事の後半の「研修から戻った社員の最初の3か月」で紹介します。
社員を育てて事業を広げる考え方に関して詳しく解説した記事はこちらです。
【経営者への提言】 リストラを実行する前に、 「事業創成」への道を考えませんか?
隣の工事を自社で受けるかどうかは、数字で決められます。
見積もりに使う項目は、次のとおりです。どれも、自社の帳簿と現場の記録から拾える数字です。
断った依頼・外注した依頼の件数
拾い方:過去半年の問い合わせの記録、外注の請求書
見積もりでの使い方:月あたりの件数に直す
1件あたりの工事の金額
拾い方:外注先の請求額、お客様への請求額
見積もりでの使い方:自社で受けたときの売上の目安
外注に回したときに残っていた利益
拾い方:お客様への請求額から外注費を引く
見積もりでの使い方:内製化で増える利益と比べる
担当する社員の1日あたりの人件費
拾い方:給与と社会保険料などから割り出す
見積もりでの使い方:工事1件あたりの人件費を出す
研修費・道具代
拾い方:研修の受講料、道具と機械の購入費
見積もりでの使い方:何か月で回収できるかを見る
助成金
拾い方:使える場合だけ見込む
見積もりでの使い方:研修費から差し引く
計算の考え方はシンプルです。
月に増える利益=(自社で受けたときの利益−これまでその依頼から得ていた利益)×月の件数
断っていた依頼や、知り合いに紹介していた依頼なら、これまでの利益は0円です。自社で受けて外注に出していた依頼なら、お客様への請求額から外注費を引いた額になります。
この「月に増える利益」で、研修費と道具代を割ると、何か月で元が取れるかが見えます。
たとえば、元を取るまでに何年もかかる計算になったら、件数が足りないか、研修の規模が大きすぎるかのどちらかです。担当を1人に絞る、受ける工事を小さなものに絞るなど、計画を組み直してください。
もう1つ、数字に出にくい効果もあります。
外注先を探す手間、日程を合わせる手間、仕上がりを確かめる手間が減ることです。現場の担当者がこうした調整に使っていた時間は、本業の営業や段取りに回せます。
隣の工事を自社で受けると決めたら、始める前に3つのことを確かめてください。
建設業法では、決められた金額より小さい工事は「軽微な建設工事」として、建設業の許可がなくても請け負えます。
建設業法施行令の第1条の2で定められている範囲は次のとおりです。
建築一式工事以外(内装仕上げなど):1件の請負代金が500万円未満
建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅
壁紙や床の貼り替えは、建築一式工事以外にあたります。1件あたり500万円未満の工事なら、許可なしで始められます。
ただし、数え方に2つの決まりがあります。
1つ目は、1つの工事を2つ以上の契約に分けても、合計の金額で判断することです。
2つ目は、注文する人が材料を用意する場合、その材料の市場価格と運送費を請負代金に足して判断することです。
消費税を含めて数えるかどうかなど、細かな扱いは国土交通省の案内や、各地の許可の窓口で確認してください。
事業が大きくなり、1件500万円以上の内装工事を受けたくなったら、そこで内装仕上工事業の許可を検討します。許可には、決められた経験や資格を持つ技術者を置く必要があります。最初から許可を目指すより、小さな工事で実績を積むほうが現実的です。
お客様を知り合いの業者に紹介していたときは、仕上がりの責任はその業者にありました。
自社で受ければ、その責任は自社が負います。
請負の工事で、引き渡したものが契約の内容に合っていなかった場合、注文した人は直してほしいと求められます。これを「契約不適合責任」と呼びます。
いつまで責任を負うかは、民法の定めと、お客様との契約の内容で決まります。工事を受けるときは、不具合が出たときの対応を契約や見積書に書いておくと、あとの行き違いを防げます。
壁紙で言えば、継ぎ目が目立つ、浮いてくる、柄がずれている、といった不具合が問題になりやすいところです。
だからこそ、社員を現場に出す前に、お客様からお金をいただける品質まで仕上げられるかを確かめる必要があります。
3つ目は人です。
内製化は、まず1人か2人の社員から始めれば十分です。
選ぶときに見る点は、次の3つです。
本業の現場に慣れていて、段取りを考えられる人
細かい作業に根気よく向き合える人
本人が「新しい技術を覚えたい」と思っている人
最後の点がいちばん大切です。本人にその気がないと、研修を終えても技術が身につきにくくなります。
未経験の社員に内装の技術を身につけさせる方法は、大きく分けて2つあります。
現場での見習い
中身:付き合いのある職人の現場に同行して覚える
向いている会社:教えてくれる職人が身近にいる会社
気をつけること:教える側の都合に左右され、期間が読めない
集中研修
中身:講習の期間を決めて集中して学ぶ(職業訓練校や民間のスクールなど)
向いている会社:早く自社の現場に出したい会社
気をつけること:研修費がかかる。修了後も場数を踏む必要がある
現場での見習いは、お金がかからないように見えます。
ただ、教える職人さんにとっては自分の仕事の手を止めることになります。忙しい時期は見ているだけの日が続き、覚えるまでの期間が読みにくくなります。新規事業として立ち上げの時期を決めたい会社には、この読めなさが一番の悩みになります。
集中研修は、期間と中身が決まっているので、立ち上げの計画が立てやすくなります。
パーフェクトコース
一人で施工を完結できる基本の習得。床(フロアタイル・クッションフロア)の施工体験を含む
エキスパートコース
柄合わせやソフト巾木まで、現場で稼げる応用力
独立開業サポート
研修に加え、開業の支援と、修了後に実際の現場案件を担当するパートナー契約
各コースの詳細は、こちらをご覧ください。
自社の新規事業の担い手として社員を育てる場合は、パーフェクトコースかエキスパートコースが目的に合います。独立開業サポートは、個人が独立するためのコースで、修了後のパートナー契約はスクールを運営する会社と結ぶものです。
スクールの案内では、企業に向けた特長として、社内での下積みや指導の手間をかけずに、実際の現場でスクールのフォローを受けながら腕を磨けることを挙げています。
受講にあたって、年齢や職業の制限はありません。道具一式はスクールで用意しているので、手ぶらで参加できます。
研修中の日程は、休みの日に合わせた受講や曜日を決めた受講も相談できます。本業を止めずに社員を育てたい会社には、ここも確かめておきたい点です。
研修を終えた社員を、いきなり大きな現場に一人で出すと、本人も会社も苦しくなります。
最初の3か月は、次の順番で任せる範囲を広げると、本人も会社も安心です。
1か月目
任せる工事:トイレ・洗面所・1部屋だけの貼り替え
会社がすること:仕上がりを担当者と一緒に確かめる
2か月目
任せる工事:2部屋程度、天井を含む貼り替え
会社がすること:かかった時間を記録し、見積もりと比べる
3か月目
任せる工事:退去後の原状回復など、まとまった工事
会社がすること:お客様の声を集め、値段と受ける範囲を見直す
この時期は、かかった時間を必ず記録してください。
慣れるにつれて、同じ広さの部屋を貼る時間は短くなっていきます。記録があれば、どの時点で値段や受ける件数を見直せばよいかが分かります。
社員を研修に出す費用には、国の助成金が使える場合があります。
厚生労働省の「人材開発支援助成金」には、「事業展開等リスキリング支援コース」があります。
このコースは、新しい事業を立ち上げるなど、会社が事業を広げるときに、社員に新しい分野の知識や技能を身につけさせる訓練を助成するものです。令和4年度から令和8年度までの期間を限った制度です。期限が近づいているので、使うつもりなら早めに労働局へ相談してください。
厚生労働省の案内では、中小企業の場合、研修の経費の75%と、研修中の賃金として1人1時間あたり1,000円が助成されます。
ただし、訓練を始める日の6か月前から1か月前までに、計画の届け出を出す必要があります。研修を申し込んでから考えるのでは間に合わないことがあるので、順番に注意してください。
どの研修が対象になるか、自社が条件を満たすかは、会社ごとに違います。必ず管轄の労働局に確認してください。
また、Kitano壁紙スクールのよくある質問では、受講費用が賃上げ促進税制の対象になるかという問いに「対象になります」と答えています。詳しくは顧問の税理士さんに相談してください。
自社で受ける工事の値段は、次の3つを見て決めます。
1つ目。これまでお客様に出していた金額
外注に出していた工事なら、お客様への請求額が1つの基準になります。お客様にとっての値段は、外注していたころと大きく変えないほうが受け入れられやすくなります。
2つ目。同じ地域で、同じ工事を受けている業者の値段
貼り替えの値段は、壁の面積や使う壁紙の種類、古い壁紙をはがす手間、下地の傷み具合で変わります。見積もりの内訳をどう分けているかも、あわせて確かめておくと安心です。
3つ目。自社の社員が1日にこなせる量
研修を終えたばかりの社員は、慣れた職人より時間がかかります。その分をお客様の値段に乗せると、外注していたころより高くなり、受け入れられにくくなります。慣れるまでの時間は、会社が社員を育てる期間として持つと考えるのが筋です。
最初のお客様には、正直に伝えるのがいちばんです。
「これまで外に頼んでいた壁紙の貼り替えを、自社の社員が研修を受けて担当するようになりました」と伝え、まずは小さな部屋から任せてもらいます。
本業で信頼を積み重ねてきたお客様なら、「おたくがやってくれるなら」と任せてくれることもあるでしょう。その信頼を裏切らないためにも、最初の数件は仕上がりを丁寧に確かめてください。
隣の工事の内製化は始めやすい一方で、つまずきやすい場面もはっきりしています。始める前に知っておけば、多くは避けられます。
研修を終えた社員が、本業に呼び戻される
本業が忙しくなると、せっかく育てた社員が元の現場に戻され、内装の仕事が止まります。技術は使わない期間が長いほど鈍ります。内装を担当する日を週に何日と決めておくと、新規事業が止まりにくくなります。
値段を安くしすぎる
「まだ慣れていないから」と安く受けると、慣れたあとに値段を上げにくくなります。値段は最初から適正に決め、慣れないうちは受ける件数のほうで調整してください。
仕上がりを誰も確かめない
外注していたころは、外注先の職人が責任を持って仕上げていました。自社で受けたら、仕上がりを確かめる役目も自社にあります。最初の数件は、担当者以外の目で確かめる体制が要ります。
一人に任せきりにする
担当の社員が休んだり辞めたりすると、その日から工事が受けられなくなります。事業として育てるなら、2人目を育てる時期も計画に入れておきます。
許可の上限に気づかない
受ける工事が大きくなると、知らないうちに1件500万円の上限に近づくことがあります。お客様が材料を用意する工事では、材料の市場価格も足して判断します。見積もりの段階で合計の金額を確かめる習慣があれば、上限を超える心配はありません。
ここまで内製化のよい点をお伝えしてきましたが、向き不向きはあります。
次に当てはまる会社は、今のまま外注を続けるほうがよい場合があります。
断っている依頼が年に数件しかない会社
研修費と社員の時間をかけても、回収できるだけの仕事がありません。信頼できる外注先を確保しておくほうが合理的です。
大きな内装工事だけを狙いたい会社
1件500万円以上の工事は、建設業の許可が必要です。技術者の要件を満たす人がいなければ、すぐには受けられません。当面は外注を続けながら、許可の準備を別に進めるほうが現実的です。
担当できる社員がいない会社
本業で手いっぱいの社員に、さらに別の工事を背負わせると、本業の品質まで落ちます。人の手当てがつくまで待つほうが安全です。
担当する社員本人が望んでいない場合
技術は、本人が覚えたいと思って初めて身につきます。望まない社員を研修に出すより、手を挙げる社員が出てくるのを待つほうが近道です。
反対に、「毎月のように頼まれて断っている」「外注先が見つからず困っている」「現場を任せられる社員がいる」という会社は、検討する価値が十分にあります。
建設業とその周辺の会社なら、本業の隣にある工事を自社で受けることが、始めやすい例です。
足場の会社が内装の貼り替えを受ける、設備の会社が修理のあとの壁紙の補修まで受ける、清掃の会社が退去後の原状回復まで受ける、といった形です。
今のお客様と今の社員を活かせるので、ゼロから市場を探す新規事業より、最初の一歩が小さく済みます。
どの工種がいちばん儲かるかを決められる公的な統計は見当たりません。
儲かるかどうかは、工種だけでなく「どこから仕事を受けているか」でも変わります。
同じ工事でも、お客様から直接受ければ、中間の手数料の分だけ手元に残るお金が増えます。本業のお客様から直接頼まれる隣の工事は、その点で利益が残りやすい仕事です。
できるようになります。ただし、かかる期間は育て方で大きく変わります。
Kitano壁紙スクールの受講風景では、法人の新事業として受講した元エステティシャンと元美容師の2名が、パーフェクトコースを受講しています。鳶職の会社の社員さんは、15日間の講習の最終日に、6畳一間を一人で仕上げました。
なお、スクールのよくある質問によると、受講者の内訳は現場経験があった方が55%、なかった方が45%です。
とはいえ、講習を終えた日から何でもこなせる人はまれです。
修了後は、今のお客様の小さな工事で場数を踏むほど、上達が早くなります。
1件の請負代金が500万円未満の内装工事なら、建設業の許可は必要ありません。
ただし、1つの工事を分けて契約しても合計で判断すること、注文する人が材料を出す場合は材料の市場価格と運送費も足すことに注意してください。
使える場合があります。
厚生労働省の人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、新しい事業に必要な技能を社員に身につけさせる訓練を助成する制度です。
訓練を始める日の6か月前から1か月前までに計画を届け出る必要があるので、研修を決める前に管轄の労働局へ相談してください。
手で使う道具のほかに、壁紙に糊をつける糊付け機が必要になるのが一般的です。
糊付け機は重さのある機械で、現場への運び込みも仕事の一部になります。Kitano壁紙スクールのコラムでは、クロス屋が30キロの糊付け機を現場に運ぶ理由を詳しく紹介しています。
糊付き壁紙や糊付代行サービスとの費用を徹底比較|クロス屋が30kgの糊付機を運ぶ理由とは?
研修の間は、腰袋を含めて施工に必要な道具一式をスクールが用意しているので、道具をそろえるのは修了後で間に合います。
できます。
Kitano壁紙スクールのよくある質問では、「背が小さい女性なのですが、貼れるでしょうか?」という問いに「貼れます。」と答えています。
法人の新事業として受講した元エステティシャンと元美容師の2名も、パーフェクトコースを受講しています。
研修の申し込みから最初の工事までと、自社で安定して回せるようになるまでを分けて考えてください。
研修の申し込み:Kitano壁紙スクールでは、受講開始の1か月前までに申し込み、3週間前までに入金
助成金を使う場合の届け出:研修を始める日の6か月前から1か月前まで
研修:パーフェクトコースなら15日間
自社で安定して回せるまで:研修後、小さな工事で慣らしていく期間として3か月ほど
助成金を使わなければ、申し込みから研修の修了まではおよそ2か月です。助成金を使う場合は、届け出の時期しだいでさらに前倒しの準備が必要になります。
いきなり外注をやめる必要はありません。むしろ、しばらくは外注先との関係を残しておくほうが安全です。
自社の社員が対応できるのは、最初は小さな工事だけです。大きな工事や、柄合わせが難しい壁紙、繁忙期に重なった依頼は、これまでどおり外注先にお願いする形が現実的です。
自社で受ける工事と外に頼む工事の線引きを決めておけば、外注先にとっても、どの仕事が来るのかが分かりやすくなります。社員が育つにつれて、その線を少しずつ動かしていけば十分です。
元請けを通して話を進めてください。
元請けの現場で施主と直接契約すると、元請けの仕事を横から取る形になり、本業の取引に響きます。まずは元請けに「内装もできる社員がいる」と伝え、元請けから仕事を受ける形にするのが安全です。
その心配はもっともです。
ただ、覚えた技術を活かせる仕事を社内で任せていれば、辞める理由は小さくなります。反対に、技術を覚えたのに活かす場がないと、外に出たくなるものです。
社員の独立を前提にして、独立後も協力業者として仕事を出す形で制度を作る方法もあります。
建設業の新規事業のアイデアは、遠くの成長分野を探さなくても、本業の現場にあります。
お客様に「ついでにこれもできない?」と頼まれて、断っている工事。それを自社の社員で受けられるようにすることが、今いる人とお客様を活かせる、始めやすい新規事業です。
最後に、この記事のポイントを整理します。
断っている依頼、外注に回している依頼をまず数える
壁紙と床の貼り替えは、多くの業種で頼まれる隣の工事
職人の高齢化が進み、外注先を確保しにくくなる流れがある
1件500万円未満の内装工事は、建設業の許可なしで受けられる
引き渡し後の責任を負う以上、社員の品質を確かめてから現場に出す
研修費には助成金が使える場合がある。計画の届け出は研修の前に
「うちの社員でも本当にできるのか」「どこから始めればよいのか」と迷ったら、まずは無料でできることから始めてみてください。
Kitano壁紙スクールでは、無料で試せる2つの入り口を用意しています。
無料「LINE職人テスト」
ゲームのような感覚で取り組めるテストです。公開していない動画も見られます。
無料「個別キャリア診断」
ヒムロ最高講師に、15分間相談できます。
詳しくは、Kitano壁紙スクールのホームページをご覧ください。