フランチャイズで独立してうまくいかなかった例を見ていくと、よく挙がる型があります。
売上の見込み違い、資金計画の甘さ、契約の条件の読み落とし、近くに同じ店ができる、人が集まらない、本部の支援が思っていたものと違う。どれも、加盟する前に確かめられることです。
フランチャイズそのものが悪いわけではありません。本部が作ったブランドや仕組みを借りて始められるのは、大きな利点です。ただ、その仕組みが自分に合うかどうか、契約の条件を納得して結んだかどうかで、結果は大きく変わります。
この記事では、フランチャイズの失敗例によく挙がる6つの型と、公正取引委員会の指針(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」)に示されている、加盟前に確かめることをお伝えします。あわせて、本部の仕組みを借りて独立する道と、自分の技能で独立する道を比べ、どちらが自分に合うかを考える材料を整理します。
【目次】
フランチャイズでの独立を考えると、次のような迷いが出てきます。
本部が示す売上の見込みは、本当なのか
加盟金やロイヤルティを払って、手元にいくら残るのか
うまくいかなかったとき、途中でやめられるのか
本部はどこまで支えてくれるのか
失敗例を知りたくなるのは、こうした迷いを確かめたいからです。
失敗例から学べるのは、「どこで判断を誤ったのか」です。この記事では、失敗の中身を型に分けて、加盟前に何を確かめればよかったのかを見ていきます。
フランチャイズの失敗例によく挙がる型を、6つに整理します。
売上の見込み違い
よくある場面:本部が示した売上に届かない
加盟前に確かめること:予想の根拠。似た立地の既存店の実績
資金計画の甘さ
よくある場面:開業費用や運転資金が足りなくなる
加盟前に確かめること:加盟金・保証金・設備費と、軌道に乗るまでの運転資金
契約条件の読み落とし
よくある場面:やめたいのに違約金が高い、契約終了後に同じ仕事ができない
加盟前に確かめること:契約期間、更新、中途解約の条件、契約終了後の競業禁止
立地と近隣の出店
よくある場面:人通りや商圏の読み違い。近くに同じチェーンの店ができ、客が分かれる
加盟前に確かめること:立地の調査の中身。ドミナント出店の条項と計画
人手と営業時間
よくある場面:人が集まらず、自分が長時間働くことになる
加盟前に確かめること:人手不足や人件費の情報、営業時間の決まり
本部の支援との食い違い
よくある場面:思っていた支援が受けられない
加盟前に確かめること:経営指導の中身、経営不振のときの支援
どの型も、契約を結ぶ前に、本部への質問や、既存の加盟者の話、自分での下調べで確かめられることです。そして、公正取引委員会の指針にも、本部が加盟希望者に示すことが望ましい情報として、多くが挙げられています。
「フランチャイズの失敗率は◯割」といった数字を見かけることがあります。
ただ、フランチャイズの失敗率を集計した公的な統計は見当たりません。業界団体の統計が集計しているのは、チェーンの数、店舗の数、売上高などで、失敗した加盟者の割合ではありません。
ネットで見かける数字には、一般の企業の廃業率を使ったものや、一部の調査から推し量ったものもあります。その数字の出どころと、何を「失敗」と数えているのかを確かめずに、判断の材料にするのは避けてください。
割合の数字より、自分が検討している本部の既存店がどうなっているかを確かめるほうが、ずっと役に立ちます。
失敗例としてよく挙がるのが、本部が示した売上や利益の見込みに届かなかった、という失敗です。
たとえば、「本部の説明では月に◯◯円の売上が見込めると聞いていたのに、開店から半年たっても、その半分ほどにしか届かない」といった場面です。見込みの数字が、自分の店とは条件の違う店の実績をもとにしていた、という形がよく語られます。
公正取引委員会の指針(令和3年4月28日に改正)では、本部が加盟者を募集する際に予想売上げや予想収益を示す場合について、こう書かれています。
「類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実,合理的な算定方法等に基づくことが必要であり,また,本部は,加盟希望者に,これらの根拠となる事実,算定方法等を示す必要がある」
予想の数字を示されたら、加盟希望者はその根拠を尋ねてかまいません。どの店の、いつの実績をもとにした数字なのか。自分が出店を考えている場所と、条件は似ているのか。根拠を聞いて、納得できるまで確かめる権利が加盟希望者にはあります。
2つ目は、お金の見込みの甘さです。
フランチャイズで開業するときには、加盟金や保証金、研修費、店舗の内装や設備の費用など、さまざまなお金がかかります。開業したあとも、ロイヤルティ(本部の商標の使用や経営指導の対価として、定期的に本部に払うお金)が続きます。
たとえば、「開業までの費用は準備できたが、開業後の売上が伸びるまでの数か月で、手元のお金が底をついた」といった場面です。
資金計画で見落としやすいのは、開業してから軌道に乗るまでの運転資金です。売上が見込みより少ない時期にも、家賃やロイヤルティ、人件費は出ていきます。
加盟を決める前に見積もるお金は、次の2つです。
開業までにかかるお金:加盟金、保証金、研修費、店舗の取得・内装・設備、開業前の広告など
開業後に毎月かかるお金:ロイヤルティ、家賃、人件費、仕入れ、借入の返済など
特に、ロイヤルティの算定方法(売上の何割か、定額か、利益に応じるのか)は、手元に残るお金を大きく左右します。加盟時に払うお金に返してもらえるものがあるのか、その条件は何か、ロイヤルティをいつ、どうやって払うのかも、あわせて確かめてください。
3つ目は、契約の条件の読み落としです。
たとえば、「やめたいと思ったときに、契約書を読み返して、中途解約に高い違約金がかかることを初めて知った」といった場面です。
フランチャイズの契約書には、契約の期間、更新、中途解約の条件などが書かれています。「うまくいかなかったらやめればいい」と考えていても、中途解約に高い違約金がかかる契約もあります。
もう1つ見落としやすいのが、契約が終わったあとの競業禁止です。契約が終わったあと、一定の地域や期間で、同じような事業をしてはいけないという定めです。
公正取引委員会の考え方では、本部の商権の維持やノウハウの保護に必要な範囲を超えるような地域、期間、内容の競業禁止を課すことが、独占禁止法上問題となりうる例として挙げられています。
ただ、問題となるかどうかは個別の判断になります。契約を結ぶ前に、契約終了後に何ができなくなるのかを確かめておいてください。「やめたあとに、身につけた仕事を続けられるか」は、独立の道を選ぶうえで大切な視点です。
4つ目は、立地と近隣の出店です。
店舗を構える事業では、人通りや周りの住む人の数、競合する店など、立地の条件が売上を大きく左右します。本部が出店場所の調査をしてくれる場合も、どんな調査をもとに判断したのかを確かめ、自分でも時間帯を変えて現地を見ておくと安心です。
もう1つ、同じチェーンの店が近くにできると、お客様が分かれ、売上が下がることがあります。本部が加盟者の店舗の周辺に同じ業種の店を出すことを「ドミナント出店」と呼びます。
公正取引委員会の考え方では、本部が加盟希望者に開示することが望ましい事項として、ドミナント出店ができるかどうかに関する契約上の条項の有無とその内容、そしてそのような出店の計画の有無とその内容が挙げられています。
出店を考えている地域の周辺に、今後同じチェーンの店が出る可能性があるのか。これも契約の前に確かめる項目です。
5つ目は、人手と営業時間です。
たとえば、「アルバイトが集まらず、オーナー自身が毎日長い時間店に立つことになった」といった場面です。
店舗を構える事業では、スタッフが集まらないと、オーナー自身が長い時間働くことになります。営業時間が契約で決まっている場合は、人が足りなくても店を開け続ける必要があります。
公正取引委員会の考え方では、本部が営業時間や臨時休業について説明する際に、特定の時間帯の人手不足や人件費の高騰など、その時点で明らかになっている経営に悪い影響を与える情報を、加盟希望者に示すことが望ましいとしています。
出店を考えている地域で、人を集められるのか。営業時間はどこまで自分で決められるのか。どちらも加盟前に確かめられます。
6つ目は、本部の支援が、思っていたものと違ったという失敗です。
「本部が全部教えてくれる」「困ったら助けてくれる」と思って加盟したのに、実際の経営指導は想像より少なかった。経営が苦しくなったとき、支援が受けられなかった。こうした食い違いも、失敗例としてよく挙がります。
公正取引委員会の考え方では、事業活動上の損失に対する補償の有無とその内容、経営不振になった場合の本部による経営支援の有無とその内容も、開示することが望ましい事項に挙げられています。
加盟前に、どんな支援が、いつ、どこまで受けられるのかを、具体的に確かめてください。すでに加盟している人の話を聞ける機会があれば、それがいちばん確かな材料になります。
ここまでの6つの型と、公正取引委員会の指針に挙げられている開示が望ましい事項をもとに、加盟前に確かめる項目をまとめます。
1. 予想売上・予想収益の根拠(どの店の、いつの実績か)
2. 加盟時に払うお金の性質、金額、返還の有無と条件
3. ロイヤルティの額、算定方法、支払いの時期と方法
4. 開業後に毎月かかるお金の総額と、運転資金の見込み
5. 契約の期間、更新、解除、中途解約の条件と手続き
6. 契約終了後の競業禁止の地域、期間、内容
7. ドミナント出店の条項と、出店の計画
8. 人手不足や人件費の情報、営業時間の決まり
9. 損失の補償、経営不振のときの支援の有無と内容
10. 既存の加盟者の話を聞けるか
小売業や飲食業などの一部のフランチャイズは、中小小売商業振興法により、本部が契約を結ぶ前に、加盟希望者に契約の内容などを書面で示し、説明することが義務づけられています。
自分が検討しているフランチャイズがこの法律の対象になるかは、本部に尋ねるか、中小企業庁の案内で確かめてください。書面を受け取ったら、上の項目と照らし合わせて読んでください。法律で決められた書面は、加盟前に手にできるいちばん確かな材料です。
本部の説明と並んで、いちばん確かな材料になるのが、すでに加盟している人の話です。話を聞ける機会があれば、尋ねたいのは次の5つです。
1
聞くこと:開業前に聞いていた売上の見込みと、実際の売上はどうだったか
分かること:予想の数字の確かさ
2
聞くこと:開業してから、想定していなかった出費は何だったか
分かること:資金計画で見落としやすい点
3
聞くこと:本部の支援で、役に立ったこと、足りなかったことは何か
分かること:支援の実際の中身
4
聞くこと:人は集まっているか。自分はどのくらい働いているか
分かること:人手と働き方の実態
5
聞くこと:もう一度選ぶとしても、加盟するか
分かること:全体としての満足度
本部から紹介された加盟者だけでなく、できれば自分で店を訪ねて、別の加盟者の話も聞いてみてください。うまくいっている店とそうでない店の両方の話を聞けると、判断の材料が偏りません。
フランチャイズへの加盟を決めるまでの進め方の一例です。急いで契約を結ぶ必要はありません。1つずつ確かめながら進めれば十分です。
1. 複数の本部の説明会に参加し、比べる
2. 候補の本部から、契約の内容を書いた書面や、予想売上の根拠を受け取る
3. 既存の加盟者の話を聞く。自分で店を訪ねる
4. 出店を考えている場所を、時間帯を変えて見に行く
5. 開業までのお金と、毎月のお金を自分で見積もる
6. 契約書を、必要なら専門家と一緒に読む
7. 家族がいれば家族と話し合い、納得してから契約する
説明会で「今月中に決めれば加盟金が安くなる」などと契約を急がされたときは、いったん立ち止まってください。確かめる時間を取れない契約は、あとで後悔の原因になりやすいものです。
フランチャイズを検討している人の中には、「自分の手で技術を身につけて独立する道」と比べている人もいるでしょう。2つの道は、何を借りて、何を自分で作るかが違います。
なお、フランチャイズには、店舗を構えるものだけでなく、店舗を持たずに一人で始めるものや、技能を使うものもあります。下の比較は、違いが分かりやすいよう、店舗型のフランチャイズを例に比べています。
最初にあるもの
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):ブランド、商品、運営の仕組み、集客の力
技能で独立する:自分が身につけた技術
自分で作るもの
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):店の運営、スタッフ
技能で独立する:仕事の出どころ、お客様とのつながり
始めるまでのお金
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):加盟金や店舗・設備、軌道に乗るまでの運転資金など。事業によって大きく違う
技能で独立する:技術を学ぶ費用、道具、車両、仕事が安定するまでの生活費など
毎月のお金
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):ロイヤルティ、家賃など
技能で独立する:車両や道具の費用、保険など
始めるまでの期間
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):研修と開業の準備
技能で独立する:技術を身につける期間
やめたあと
本部の仕組みを借りる(店舗型のフランチャイズの例):契約終了後の競業禁止があれば、同じ仕事を続けられないことがある
技能で独立する:身につけた技術は自分に残る。取引先との契約に制限がないかは確かめる
どちらにも長所と短所があります。
フランチャイズは、自分にない仕組みを借りて、早く事業を形にできる道です。技能で独立する道は、仕組みを自分で作る手間がある代わりに、身につけたものが自分に残る道です。
店の運営やスタッフの管理が得意、または好き
自分で一から仕組みを作るより、決まった仕組みを回すほうが力を出せる
始めるまでのお金を用意できる
手を動かして、目に見える仕上がりを作るのが好き
技術を身につけるための期間を取れる
技術を学ぶ費用と、仕事が安定するまでの生活費を用意できる
仕事の出どころを、自分で作っていく覚悟がある。または、仕事を出してくれる先と組む形を選ぶ
技能で独立する道の一例に、内装(壁紙・床など)の職人があります。
壁紙や床の貼り替えの依頼は、賃貸住宅の入居者の入れ替わりや、住まいの模様替え、店舗の改装などから生まれます。店舗を構える必要がないことが多く、道具と車両があれば始められます。一方で、技術を身につける期間と、仕事の出どころを作る準備が必要です。
コースは次のとおりです。
パーフェクトコース
一人で施工を完結できる基本の習得。床の施工体験を含む
エキスパートコース
柄合わせや、床と壁の境目に貼るソフト巾木まで、現場で稼げる応用力
独立開業サポート
研修に加え、開業の支援と、修了後に実際の現場案件を担当するパートナー契約
各コースの詳細は、こちらをご覧ください。
仕事の出どころを一から自分で作るのが不安な人に向けて、独立開業サポートでは、研修の修了後にパートナー契約を結び、実際の現場案件を担当する形をとっています。技能で独立する道の中に、仕事の出どころの一部を契約で補う形がある、と考えると分かりやすいでしょう。スクールの案内では、自分で営業しなくても仕事を受けられること(「営業なし」)と、加盟店が本部に払うような継続的な支払いがないこと(「ロイヤリティ0円」)を掲げています。
この記事で見てきたとおり、どんな契約でも条件を確かめることが大切です。単価の決め方、ほかの仕事と掛け持ちできるか、契約の期間や途中でやめるときの条件といった契約の条件は、申し込みの前の説明で確かめてください。
フランチャイズで失敗した加盟者の割合を集計した公的な統計は見当たりません。
ネットで見かける「失敗率」には、一般の企業の廃業率などから推し量ったものもあり、数字の出どころと定義を確かめる必要があります。割合より、検討している本部の既存店の状況を確かめるほうが確実です。
業界全体の閉店率を示す公的な統計は見当たりません。
検討している本部について、ここ数年で開いた店と閉じた店の数を尋ねてみてください。答えてもらえるかどうかも、本部を見る1つの材料になります。
開業資金を借入でまかなっていれば、事業をやめても借入の返済は残ります。中途解約に違約金がかかる契約なら、その支払いも生じます。
だからこそ、借入の額と、中途解約の条件を、加盟の前に確かめておくことが大切です。
契約の中身については、弁護士などの専門家に相談するのが確実です。本部の行為が独占禁止法上問題になるおそれがある場合は、公正取引委員会に情報を提供することもできます。
まずは、契約書と、加盟前に受け取った書面や説明の記録を手元にそろえておいてください。
加盟金が安いことだけで、失敗しにくいとは言えません。
加盟金が安くても、毎月のロイヤルティや、決められた仕入れ、設備のリースなど、開業後に出ていくお金が大きい場合があります。比べるときは、開業までのお金と毎月のお金を合わせて見ます。
どちらがよいかは、人によって違います。
店の運営や仕組みを回すことが得意で、始めるまでのお金を用意できるならフランチャイズ、手を動かす仕事が好きで、技術を身につける期間を取れるなら技能で独立する道が向いています。
どちらを選ぶ場合も、契約の条件と、仕事の出どころを確かめてから決めてください。
フランチャイズの失敗例によく挙がる型は、次の6つです。
売上の見込み違い:予想の根拠を確かめる
資金計画の甘さ:開業までのお金と、毎月のお金を分けて見積もる
契約条件の読み落とし:中途解約と、契約終了後の競業禁止を確かめる
立地と近隣の出店:ドミナント出店の条項と計画を確かめる
人手と営業時間:人手不足の情報と、営業時間の決まりを確かめる
本部の支援との食い違い:支援の中身を具体的に確かめる
フランチャイズは、自分にない仕組みを借りて始められる道です。その仕組みが自分に合うか、契約を納得して結べるかを確かめてから決めてください。
そして、仕組みを借りるより、自分の技術を身につけて独立する道が気になるなら、まずは無料でできることから始めてみてください。
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