クロス職人の道具をそろえようとして、通販の一覧を開いてみる。地ベラ、竹ベラ、撫で刷毛、ジョイントローラーと名前が並んでいても、どれが何のためにあるのか、どの順で手に入れればよいのかは書かれていません。
道具は、名前から覚えるより、クロスを貼る工程に沿って覚えたほうが早く身につきます。どの道具も、工程のどこかで決まった役目を持っているからです。
【目次】
クロスの道具を選ぶときに押さえておきたいことは、次の3つです。
工程に沿って覚える:下地を整える、測る、糊を付ける、貼る、押さえる、切る、拭く。工程ごとに使う道具が決まっている
壁紙ごとの指定で選ぶ:壁紙メーカーの施工要領書には、刷毛やローラー、カッターの選び方が書かれている。同じ道具でも、壁紙の種類で向き不向きがある
段階でそろえる:最初は腰袋に入る手道具から。糊付機や作業車は、仕事を受ける段階になってから考える
道具だけを先にそろえても、使い方が分からなければ仕上がりは変わりません。道具の役目を知り、手を動かしながら覚えていくのが、職人になるいちばんの近道です。
壁紙の施工には、業界団体が定めた標準の手順があります。一般社団法人 壁装研究会の「壁紙標準施工法」です。
この手順に沿って、工程ごとに使う主な道具を並べると、次のようになります。
貼り替えの現場では、最初に照明やスイッチのカバーなどを外し、古いクロスを剥がします。そのあと、下地の凹みや継ぎ目をパテで埋め、乾いたらペーパーで平らにならします。
使う道具:パテベラ、パテを練る容器、サンドペーパー(研磨の道具)、ドライバー
壁装研究会の施工法では、下地の検査として、凹凸や不陸(平らでない状態)、ボードの継ぎ目の段差などを確かめるよう定めています。下地の乾き具合は、水分計で測った値が「8〜11%以下」であることとされています。
施工法には、施工の前に改めて現場を実測し、寸法を確かめるよう書かれています。
続いて、どこに継ぎ目(ジョイント)を置くかを決めます。これが割り付けです。
使う道具:メジャー、下げ振り、墨つぼやチョークライン(線を引く道具)
壁は「下げ振りで垂直線を求めて」、貼り始めの基準線を出すと定められています。Kitano壁紙スクールの受講風景でも、講師が「貼り出し1枚目」の重要性を伝える場面があります。
壁紙は、貼る面の寸法より少し長めに裁ちます。柄物は、柄を合わせるための長さを足して裁ちます。
プロの現場では、糊付けに糊付機を使います。施工法では、手で付けるときは「回り糊、中糊を基本とする」と定めています。
使う道具:糊付機、糊を作るバケツとかくはんの道具、刷毛、ローラー、カッター、定規
糊を付けたら、糊の面どうしを合わせてたたみ、貼るのに向いた状態になるまで置きます。施工法では、これを「養生(熟ませ)時間・オープンタイム」と呼んでいます。
時間は、壁紙メーカーの指定があればそれに従います。30分以上置く必要がある壁紙は、プラスチック製の袋などに入れて乾燥を遅らせるよう定められています。
基準線に合わせて仮に貼り、位置が正しいと確かめてから撫で付けます。撫で付けたら、上下の端や入隅(へこんだ角)を、へらで押し込んで角を出します。
使う道具:撫で刷毛またはスムーサー、地ベラなどのへら、脚立や作業台
施工法では、撫で付けは裏側の空気を追い出すように行い、方向は「原則として上下とし、横には強く撫でない」と定めています。
隣の壁紙と柄や目を合わせ、継ぎ目を仕上げます。施工法では、継ぎ目の方法として「突き付け張り」「重ね張り」「重ね裁ち」の3つを挙げています。
重ね裁ちは、2枚を少し重ねて貼り、重なった部分を一度に切る方法です。現場では「重ね切り」とも呼ばれます。
使う道具:カッターと替え刃、地ベラまたは定規、下敷きテープ、ジョイントローラー
壁紙の四方の端や継ぎ目は、ローラーで押さえてよく圧着させます。重ね裁ちのときは、下地の面を切らないよう、下敷きなどを入れて裁つと定められています。
Kitano壁紙スクールの受講風景でも、ふすま職人の受講生が継ぎ目を切るときのことを話しています。下敷きテープを丁寧に入れ、裏紙まで切らないよう刃先の感覚に集中したそうです。
天井際や幅木の際など、上下左右の余った部分を切り取ります。最後に、壁紙の表面や周りに付いた糊を拭き取ります。
使う道具:カッター、地ベラ、スポンジ、ぞうきん、バケツ
施工法は、糊の汚れは「直ぐ拭き取る」よう求めています。貼り終えてからも改めて点検し、汚した部分をきれいにすることも定めています。
ここでいう養生は、汚れや傷を防ぐために覆って守ることです。糊を付けたあとの「養生(熟ませ)時間」とは意味が違います。
施工法は、床や家具、まわりの壁などを汚さないための養生も工程に入れています。養生の程度に応じて、家具を養生シートで覆う、接する壁をマスキングテープで守る、床を全面シートで覆う、といった方法が示されています。
使う道具:養生シート、マスキングテープ、養生テープ
貼り終えたあとも、仕上げた壁紙を傷めないように養生します。施工法では、急な乾燥による不具合を防ぐため、おおむね48時間の養生(熟成)の時間をとるよう求めています。
クロスの道具というと、貼るための道具に目が行きがちです。けれど、仕上がりを大きく左右するのは、その前の下地づくりです。
施工法は、下地の平らさを1級から4級までの4段階に分けています。薄手の無地の壁紙には「十分な平滑さ」の2級が、厚手の発泡ビニルの壁紙には「平らな粗面」の4級が、それぞれ例として挙がっています。
Kitano壁紙スクールのコラムでも、薄いクロスは下地のわずかな凹凸を拾って仕上がりが悪くなることがある、と書いています。
つまり、同じ下地でも、貼る壁紙によってパテをどこまで丁寧にかけるかが変わります。
新しい石こうボードの下地では、継ぎ目のコーキング処理、下パテ、ジョイントテープ張り、中パテと研磨、上パテと研磨、という順で平らにします。研磨には研磨紙やサンダーを使います。
使う道具:パテベラ、パテ、ジョイントテープ、研磨紙、サンダー
Kitano壁紙スクールの受講風景では、ふすま職人の受講生が、新しいボードへのパテ打ちを1日かけて練習しています。下パテと上パテの役割を教わったうえで、いちばん驚いたのはパテの後のサンダー掛けの量だった、と話しています。
講師の仕上がりと比べて、自分のパテが余計な手間を生んでいたと気づいた、という振り返りです。パテベラの扱いが上手になるほど、後の研磨が楽になります。
施工法では、下地の面にシーラーを塗ると定めています。シーラーには、吸水性を調節する、下地からのアルカリや水分のにじみ出しを防ぐ、表面を強くする、下地の色の違いを直す、といった目的があります。
次に貼り替えるときに剥がしやすくすることも、目的の一つに挙げられています。シーラーを塗るローラーや刷毛も、下地づくりの道具です。
下地の埃や汚れ、油分など、接着を妨げるものは、きれいに取り除きます。下地にサインペンなどで書き込みがある場合は、溶剤などで拭き取るか、サンダーで擦って全部取り除くよう定められています。
クロスの技能検定は、国家検定の「表装(壁装作業)」です。厚生労働省が定めた試験の細目では、表装の作業に使う道具を次の8つに分けています。
割付け用器工具:メジャー、下げ振り、墨つぼなど、測って印を付ける道具
接着剤塗布用器工具:糊付機、刷毛、ローラーなど、糊を付ける道具
切断用器工具:カッター、定規、地ベラなど、切る道具
仕上げ用器工具:撫で刷毛、スムーサー、ジョイントローラーなど、貼って押さえる道具
加工用加熱器工具:熱を使って加工する道具
下地乾燥測定器:下地の乾き具合を測る水分計
補助器工具:脚立や作業台など、作業を助ける道具
その他
道具の名前を見て、どの種類に入るかを考えると、役目が整理しやすくなります。1級と2級の学科試験では、これらの種類と用途について「詳細な知識」を持つことが求められます。
技能検定に受かるために道具の名前を覚えるのではありません。現場で一つひとつの道具を使いこなした結果として、自然に知識が身につくものです。
ここからは、腰袋に入れて使う道具を中心に、役割と選び方を見ていきます。商品の名前や値段より先に、道具の役目から考えてみてください。
撫で刷毛は、貼った壁紙の上を撫でて、裏の空気を追い出す道具です。スムーサーは、同じ役目を持つへら状の道具です。
ある壁紙メーカーの施工要領書には、「なで付けの際はやわらかな刷毛を」使うよう書かれています。
同じ施工要領書は、継ぎ目のなで付けは横方向にしないよう求めています。壁紙を引っ張ってしまい、継ぎ目が開く原因になるからです。
施工法には、上端や下端、入隅などの角を「へらで良く押し込みしっかりと角を出す」工程があります。地ベラは、このへら押さえや、カッターで切るときに当てる道具として使われます。
Kitano壁紙スクールの受講風景でも、「地ベラを当てて不要な部分をカッターで切る基本裁断」を、講習の早い段階で練習しています。
工務店の後継者の受講生は、初めて貼った日に、ヘラやカッターの扱いが難しく、切り損じや隙間が続いたと振り返っています。クロスを優しく扱おうとするあまり、角をしっかり出せていなかったのが反省点だったそうです。
講師は、道具の扱いは回数をこなすことで徐々に感覚が掴めてくる、と伝えています。
地ベラには、厚みや長さの違うものがあります。Kitano壁紙スクールの受講風景では、1.2mm厚の地ベラを使った裁断の練習が紹介されています。
カッターは、壁紙を切る道具です。
壁紙メーカーの施工要領書には、継ぎ目が目立ちやすい壁紙について、「カッターは薄刃のものを使用し、こまめに替えて常に鋭利な状態でお使いください」と書かれています。切れ味の落ちた刃で切ると、切り口が乱れ、継ぎ目がきれいに仕上がりません。
替え刃は、ためらわずに替えるものと考えておきましょう。
定規は、地ベラでは長さや精度が足りないときに使います。壁紙の種類によっては、地ベラを使った重ね切りを避けるよう指定されていることもあります。
ある施工要領書には、「地ベラを使った重ね切りは避け、定規をご使用ください」とあります。地ベラを使うと切り口が斜めになり、継ぎ目にすき間ができる原因になる、という理由です。
ジョイントローラーは、継ぎ目や端を押さえて圧着させる小さなローラーです。施工法の「ローラー掛け」の工程で使います。
施工要領書には、ローラー掛けにはウレタン製のものを使うよう書かれています。硬い樹脂製のローラーで強く擦ると、テカリやキズが出る場合があるからです。
パテベラは、下地の凹みや継ぎ目にパテを塗り、平らにならす道具です。下地の出来は、クロスの仕上がりを大きく左右します。
Kitano壁紙スクールの受講風景でも、講師が下地作りを「クロスの仕上がりを左右する命」と伝える場面があります。
糊付機は、壁紙に糊を付ける機械です。
Kitano壁紙スクールのコラムによると、プロが現場に持ち込む糊付機は本体だけで約30kgあります。それでも持ち込む理由は、その日の気温や湿度、下地の状態に合わせて、糊の濃さをその場で調整できるからです。
糊付機を使うときにも、施工法の決まりがあります。メーカーが指定する以上に水で薄めないこと、糊がかすれたり不均一になったりしないようにすることです。
糊付機の理由をもっと詳しく知りたい方は、次のコラムもご覧ください。
腰袋は、手道具を腰に下げて持ち歩くための袋です。脚立の上でも、手を伸ばせばすぐに道具が取れるようにします。
どこに何を入れるかに、決まった正解はありません。Kitano壁紙スクールの受講風景では、大工さんの受講生の場面が紹介されています。腰袋の中の道具の配置を、自分が最もスムーズに動ける位置に調整していく場面です。
道具は、一度にすべてそろえる必要はありません。仕事の段階に合わせて、少しずつそろえていくものです。
最初にそろえたいのは、腰袋に入る手道具です。撫で刷毛かスムーサー、地ベラ、カッターと替え刃、定規、ジョイントローラー、パテベラ、メジャー、そして腰袋です。
手道具は、実際に使ってみて、自分の手に合うものを選ぶのがいちばんです。同じ名前の道具でも、重さや握りやすさ、しなり具合が違います。
続いて、器具を外すためのドライバーなどの工具、脚立や作業台、下地を整えるための道具をそろえます。
脚立や作業台は、規則に合ったものを選びましょう。安さだけで選ぶ道具ではありません。
糊付機や作業車は、自分で仕事を受けるようになってから考えるものです。会社に勤める職人なら、会社の糊付機や車を使えることもあります。
Kitano壁紙スクールのコラムでは、糊付けを済ませた壁紙だけを持ち込む現場も紹介しています。部分的な貼り替えや、エレベーターのない階の現場です。現場の状況を読んで、最適な搬入方法を選ぶことも、プロの判断の一つです。
独立する前に、どの道具がどの段階で必要になるかを整理しておきましょう。独立までの道のりは、次のコラムでも紹介しています。
壁紙には、一般的なビニルの壁紙のほかに、織物、紙、塗装用の下地など、さまざまな種類があります。種類が変われば、道具の向き不向きも変わります。
道具を選ぶときに頼りになるのが、壁紙メーカーが出している施工要領書です。施工要領書を読むと、次のようなことが分かります。
刷毛の硬さ:やわらかな刷毛を使うよう指定している壁紙がある
ローラーの材質:ウレタン製を使うよう指定している壁紙がある
カッターの刃:薄刃のものを、こまめに替えるよう指定している壁紙がある
切り方:地ベラを使わず定規で切るよう指定している壁紙がある
切り込みの深さ:カッターで石膏ボードの原紙まで切り込むと、継ぎ目にすき間ができる原因になる、と注意している壁紙がある
ここで挙げたのは、特定の種類の壁紙についての指定です。すべての壁紙に同じことが当てはまるわけではありません。
だからこそ、初めて扱う壁紙は、貼る前に施工要領書を読む習慣をつけておきましょう。
施工法は、新しく扱う壁紙について、事前に2つのテストをするよう定めています。
伸縮性試験:90cm角に切った壁紙に糊を付け、10分刻みで伸び縮みを測る
試験張り:数枚を貼り継いで、継ぎ目や折り曲げなどに向いているかを見る
糊を付けた壁紙は、時間とともに伸び縮みします。どのくらい置いてから貼るか、どの道具で押さえるかは、こうしたテストの結果からも決まります。
施工法は、糊(接着剤)の配合の標準も示しています。でんぷん系の接着剤80部に、合成樹脂系の接着剤20部を混ぜ、水30部で薄めたものです。
ただし、壁紙メーカーが接着剤を指定している場合は、その仕様に従います。
塗る量にも決まりがあります。下地のシーラーや継ぎ目のテープなどを含めた合計で、固形分にして1平方メートルあたり30g以下とされています。
Kitano壁紙スクールのコラムでは、その日の気温や湿度、下地の状態に合わせて、糊の濃さを微調整することを「職人の技」と書いています。糊付機という道具を使いこなすことは、糊を使いこなすことでもあります。
同じ道具でも、貼る場所によって使い方が変わります。壁装研究会の施工法が定めている要点を見ていきます。
天井は、割り付けに沿って基準線を出し、貼り始めの1mほどを基準線に正確に合わせて仮に貼ります。正しい位置に置けたと確かめてから、線に沿って貼り進めます。
天井の作業では、作業台を使うことが多くなります。施工法では、機械や作業台を置く場所は、作業の効率と安全性を考えて選ぶよう定めています。
Kitano壁紙スクールの受講風景では、天井を貼った受講生が「空気を抜く際の刷毛(ハケ)の動かし方がポイントだと気づきました」と話しています。真っ直ぐ撫でることを意識すれば、クロスが曲がらないと分かった、という気づきです。
入隅は、壁と壁がへこんで出会う角です。施工法では、壁紙は「原則として入隅で切り、張り廻さない」と定めています。
施主や現場監理者から、回して貼るよう指示があった場合は、それに従います。
壁紙メーカーの施工要領書にも、できるだけ入隅で壁紙を継ぐことをすすめる記述があります。下地の継ぎ目をまたいで貼ると、建物の動きで、入隅にふくれやよじれが出る場合があるためです。
天井と壁の境の回り縁や、床際の幅木、柱が木の場合は、1〜2mmほど長めに切り、すき間をふさぐ材料(コーク)を差します。ボードの下地の入隅も同じです。
金属のドア枠の際は、金属の表面に刃が当たらないように切ると定められています。
コンセントやスイッチ、窓枠のまわりは、形が込み入っていて、初めのうちは時間がかかる場所です。
ただ、壁装研究会の施工法には、こうした場所だけを取り上げた項目はありません。国の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(令和7年版)の壁紙張りの節も、下地の整え方と「たるみ、模様等の食違いのないよう」貼ることを定めるまでで、器具や窓のまわりの手順は書かれていません。
器具に関係する記述としては、施工法の割り付けの項に、天井は「外光の差し込む方向ならびに照明器具との関係を考えて」割り付ける、という一文があります。
器具や窓のまわりでも、使う道具と考え方は、ほかの場所の切り付けと同じです。余った壁紙を、地ベラや定規を当ててカッターで切り取り、ローラーで端を押さえます。どこで刃を入れ、どの順番で切るかは、現場で講師や先輩の手元を見て覚えていく部分です。
道具を扱ううえで、欠かせないのが安全のことです。クロスの施工では、脚立に乗り、刃物を使う時間が長くなります。
厚生労働省の「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」によると、建設業で休業4日以上となった死傷者は13,437人でした。事故の型で見ると、墜落・転落が4,343人で最も多く、切れ・こすれは1,158人でした。
死亡した214人のうち、墜落・転落は91人です。高いところでの作業は、少しの油断が大きな事故につながります。
脚立には、労働安全衛生規則の第528条に決まりがあります。事業者は、次の条件に合わない脚立を使わせてはいけないと定められています。
丈夫な構造であること
材料に、著しい損傷や腐食がないこと
脚と水平面との角度を75度以下とし、折りたたみ式のものは、その角度を確実に保つための金具などを備えること
踏み面は、作業を安全に行うために必要な面積があること
同じ規則の第518条では、高さ2m以上の場所で墜落の危険がある作業をするときは、足場を組むなどして作業床を設けるよう定めています。長崎労働局の資料では、脚立は足場として認められない、と注意しています。
長崎労働局の資料「労働災害の撲滅に向けて!~事例から学んでゼロ災害~ 脚立災害編」では、脚立を使うときの注意として、次のことを挙げています。
脚立の天板に乗らない、またがない
天板や踏さんに身体を当てて作業をする
必ず平坦な場所で使い、凸凹したところでは使わない
バランスを崩したり、足を滑らせたりしないよう注意する
同じ資料は、天板にまたがると、作業の反動で後方に転倒する危険があると説明しています。撫で付けやローラー掛けのように、壁に力をかける作業では、とくに気をつけたいところです。
建設業の労働災害では、切れ・こすれも少なくありません。カッターの持ち方や刃の出し方、切るときに手を置く位置は、最初に講師から現場で教わり、くせになる前に正しい形を身につけておきたいところです。
道具の名前と一緒に、現場で使う言葉も覚えておくと、講師や先輩の指示が分かりやすくなります。ここでは、壁装研究会の施工法に出てくる言葉を中心に紹介します。
入隅:壁と壁、壁と天井がへこんで出会う角
出隅:壁と壁が出っ張って出会う角
不陸:下地が平らでない状態。施工法の下地の検査項目に挙がっている
ジョイント:壁紙と壁紙の継ぎ目
突き付け張り:壁紙の端と端を突き合わせて継ぐ方法
重ね裁ち:2枚を重ねて貼り、重なった部分を一度に切って継ぐ方法。現場では「重ね切り」とも呼ばれる
熟ませ(オープンタイム):糊を付けた壁紙を、貼るのに向いた状態になるまで置く時間
撫で付け:壁紙の裏の空気を追い出すように、刷毛などで撫でること
切り付け:上下左右の余った壁紙を切り取ること
コーク:すき間をふさぐための充てん材
なお、「地ベラ」「ジョイントローラー」「撫で刷毛」といった道具の名前そのものは、壁装研究会の施工法にも、国の標準仕様書にも定義が載っていません。施工法に出てくるのは「へら押さえ」「ローラー掛け」「撫で付け」といった工程の名前で、どの道具を使うかまでは決めていないのです。
ですから、道具の名前は工程と結びつけて覚えると混乱しません。聞き慣れない名前が出てきたら、どの工程で何をする道具かを講師や先輩に聞いてみてください。
道具の名前と役割は、記事で読めば分かります。けれど、実際に使いこなせるようになるには、手を動かす時間が欠かせません。
Kitano壁紙スクールの受講風景には、道具に向き合う受講生の姿が多く残っています。
リフォーム会社の受講生は、講習2日目に、地ベラを当てて不要な部分をカッターで切る基本の裁断を練習しました。「最初はカッターの力加減やヘラの当て方が分からず、たくさん失敗してしまいました」と話しています。
講師がその場で失敗の理由を伝え、後半には手の動かし方のコツが少しずつ掴めてきた、と振り返っています。
ルームクリーニングと介護の仕事をしている受講生は、壁紙の種類が変わると、基本の「ヘラを当てて切る」動作が難しくなったと話しています。講師は、壁紙の素材が変わるとカッターの入り方や手応えも変わる、と伝えています。
カナダで塗装職人をしている受講生は、講習の途中で、自分で選んだ道具を初めて腰袋に下げて施工に臨みました。地ベラや刷毛など、自分の道具を持つと、作業がいつも以上に楽しく感じられたそうです。
道具は、持っているだけでは腕になりません。使い方を教わり、失敗し、直していく中で、道具が手になじんでいきます。
道具は、手入れをして長く使うものです。とくに糊付機は、使い終わったら洗って、次の現場で同じように使えるようにしておく必要があります。
Kitano壁紙スクールの受講風景には、糊付機のメンテナンス(洗い方)を学ぶ日も記録されています。道具の手入れまでを含めて、職人の仕事です。
Kitano壁紙スクールのよくある質問では、腰袋を含め、施工に必要な道具一式は完備していると答えています。手ぶらで来てかまいません。
プロとして自分の道具にこだわりがある方は、使い慣れたものを持参することもできます。教材費などの追加費用はなく、手道具や壁紙などの資材もすべて用意されています。
糊付機の使い方は、カリキュラムに含まれています。受講風景には、糊の作り方から糊付機の設定、実際に糊を付けて貼るまでを学ぶ日が、多く記録されています。
受講風景では、受講生にプロ仕様の道具を特別価格で提供していることも紹介されています。使ってみて手になじむものを、受講中に見つけることができます。
独立開業サポートでは、作業車や糊付機、手道具、工具は、ご自身で用意することになっています。そのうえで、糊付機や道具類はレンタルの相談に乗っており、車や糊付機を賢く手に入れるアドバイスもしています。
独立開業サポートの説明では、パートナー契約の現場なら、壁紙から糊やボンドの副資材まで、材料は会社側で揃えるとしています。何から手に入れればよいかも、相談しながら決められます。
コースは次のとおりです。
パーフェクトコース
一人で施工を完結できる基本の習得。床(フロアタイル・クッションフロア)の施工体験を含む
エキスパートコース
柄合わせやソフト巾木まで、現場で通用する応用力
独立開業サポート
研修に加え、開業の支援と、修了後に実際の現場案件を担当するパートナー契約
各コースの詳細は、こちらをご覧ください。
腰袋に入れる手道具としては、撫で刷毛かスムーサー、地ベラ、カッターと替え刃、定規、ジョイントローラー、パテベラ、メジャーが基本です。
このほかに、糊付機、脚立や作業台、器具を外す工具、糊を作るバケツ、拭き取りのスポンジなどを使います。
カッターで切ります。切るときは、地ベラや定規を当てて、まっすぐ切れるようにします。
継ぎ目を重ねて切るときは、下地を切らないよう、下敷きテープなどを入れて切ります。
特定の商品より、まずは道具の役目と、壁紙ごとの指定を知ることをおすすめします。同じ名前の道具でも、手の大きさや力の入れ方で、合うものが変わります。
実際に使ってみて、自分の手になじむものを選びましょう。
何回で替えるという決まりは、施工法には書かれていません。壁紙メーカーの施工要領書には、こまめに替えて常に鋭利な状態で使うよう書かれています。
切れ味が落ちたと感じたら、すぐに替えるのが基本です。
最初から自分で持つ必要はありません。会社に勤める職人なら、会社の糊付機を使えることもあります。
自分で仕事を受けるようになってから、どのような現場が多いかを見て考えましょう。
壁装研究会の施工法では、撫でる方向は原則として上下とし、横には強く撫でないと定めています。継ぎ目を横に撫でると、壁紙を引っ張って継ぎ目が開く原因になります。
水分計で測ります。壁装研究会の施工法では、下地の乾燥状態は、水分計で測った値が「8〜11%以下」であることとされています。
技能検定の試験細目でも、道具の種類の一つに「下地乾燥測定器」が挙げられています。
労働安全衛生規則の第528条が基準になります。丈夫な構造で、著しい損傷や腐食がなく、脚と水平面との角度を75度以下に保つ金具などを備え、踏み面に必要な広さがあることです。
高さ2m以上で墜落の危険がある作業では、脚立を作業床の代わりにはできず、足場などの作業床が必要になります。
壁装研究会の施工法では、入隅は原則として切り、回して貼らないと定めています。施主や現場監理者から回して貼るよう指示があった場合は、それに従います。
学べます。Kitano壁紙スクールでは、腰袋を含め、施工に必要な道具一式を用意しています。
自分の道具をそろえるのは、使い方を覚えてからでも遅くありません。
道具選びで押さえたい3つのポイントを、振り返っておきます。
工程に沿って覚える:道具は、使う工程と一緒に覚えると迷わない
壁紙ごとの指定で選ぶ:施工要領書を読み、刷毛やローラー、カッターを壁紙に合わせる
段階でそろえる:手道具から始め、糊付機や作業車は仕事を受ける段階で考える
道具は、使いこなしてこそ意味があります。役目を知り、正しい使い方を教わりながら、自分の手になじむ道具を一つずつ増やしていきましょう。
クロスの道具を手に取って学びたいなら、まずは無料でできることから始めてみてください。
Kitano壁紙スクールでは、無料で試せる2つの入り口を用意しています。
無料「LINE職人テスト」
ゲームのような感覚で取り組めるテストです。公開していない動画も見られます。
無料「個別キャリア診断」
ヒムロ最高講師に、15分間相談できます。
詳しくは、Kitano壁紙スクールのホームページをご覧ください。