脱サラは、なぜ失敗するのか。
失敗の理由は人それぞれに見えますが、整理すると3つの型に分かれます。
1つ目は、業種の選び方の失敗です。経験のない分野に、準備が足りないまま飛び込んでしまう形です。
2つ目は、お金のかけ方の失敗です。最初に大きなお金をかけすぎて、うまくいかなかったときに引き返せなくなる形です。
3つ目は、仕事の確保の失敗です。技術や商品はあっても、お客様や仕事の出どころがなく、収入が立たない形です。
この3つの型は、どれも会社を辞める前に手を打てます。
この記事では、公的な調査で分かっている開業の実態を確かめたうえで、型ごとの避け方と、退職前にやっておく手続きをお伝えします。あわせて、「手に職をつけてから独立する」という道が、3つの型のどこに効くのかも見ていきます。
【目次】
会社を辞めて、自分の力で働きたい。そう考えたことのある会社員は少なくないでしょう。
上司との関係、先の見えない給料、決められた働き方。理由はさまざまでも、「このままでいいのか」という気持ちは本物です。
ところが、脱サラの話になると、失敗した人の話や「末路」といった言葉もよく耳に入ってきます。家族のこと、住宅ローンのこと、年齢のこと。頭に浮かぶ不安も、どれも現実的なものです。
失敗が怖いと感じるのは、慎重に考えている証拠です。
怖さを打ち消すために勢いで辞めるより、怖さの中身を分けて、1つずつ手を打っていくほうが、結果として早く独立にたどり着けます。
脱サラの失敗の型と、避け方は次のとおりです。
業種の選び方
よくある場面:経験のない分野を、雰囲気や流行で選ぶ
辞める前にできること:経験を活かせる分野を選ぶか、技能を先に身につける
お金のかけ方
よくある場面:店舗・設備・加盟金などに大きなお金をかける
辞める前にできること:初期投資と毎月の固定費を小さく始める。生活費を別に確保する
仕事の確保
よくある場面:開業してからお客様を探し始める
辞める前にできること:独立する前に、仕事の出どころを決めておく
この3つは、互いにつながっています。
経験のない分野を選ぶと、仕事の取り方も分からず、それを補うために広告や設備にお金をかけることになります。1つの型でつまずくと、ほかの型にも波及しやすいのです。
逆に言えば、たとえば業種の選び方の型を先に潰しておくと、ほかの型のリスクも下がります。
失敗の型を見る前に、実際に開業した人たちがどんな状況なのかを確かめておきます。
日本政策金融公庫は、毎年「新規開業実態調査」を行っています。2025年12月に公表された2025年度の調査から、主な数字を抜き出しました。
開業時の平均年齢:43.9歳(調査開始以来最高)
開業時の年齢の内訳:40歳代が36.9%、30歳代が28.0%
勤務した経験がある人:97.6%
開業した業種での勤務経験(斯業経験)がある人:81.1%
開業費用:平均975万円、中央値600万円
開業時に集めた資金(資金調達額):平均1,219万円
集めた資金の内訳:金融機関などからの借入が平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)
開業費用と、開業時に集めた資金は、調査の中で別々に集計された数字です。借入と自己資金は、集めた資金(1,219万円)の内訳です。
この結果から、2つのことが読み取れます。
1つ目。開業する人のほとんどは会社などで働いた経験があり、40歳代がいちばん多い
脱サラは若い人だけのものではありません。開業時の平均年齢は43.9歳で、40歳代がいちばん多い層です。
2つ目。開業する人の8割は、その業種で働いた経験がある
開業した業種で勤務した経験のことを、この調査では「斯業経験(しぎょうけいけん)」と呼んでいます。8割の人が、経験のある分野で開業しています。
この数字は、経験があると失敗しにくいことを示したものではありません。ただ、多くの人が経験を持って開業している以上、経験のない分野で開業するなら、その差を開業前に埋めておく必要があると読めます。
同じ調査では、開業した人が苦労していることも尋ねています。
開業時
いちばん多い苦労:資金繰り、資金調達(56.9%)
2番目に多い苦労:顧客・販路の開拓(49.9%)
調査時点(開業後)
いちばん多い苦労:顧客・販路の開拓(48.8%)
2番目に多い苦労:資金繰り、資金調達(36.2%)
お客様や仕事の確保に苦労している人は、開業時も開業後も約半数(49.9%と48.8%)で、ほとんど変わっていません。一方で、お金の苦労は開業時の56.9%から、開業後は36.2%に下がっています。
つまり、お金の苦労は開業後に和らいでいくのに対して、仕事の確保の苦労は開業後も続きます。 開業後の苦労の1位が入れ替わっているのは、そのためです。
ネットでは「脱サラの◯割が失敗する」といった数字を見かけることがあります。
ただ、こうした数字の多くは、企業の廃業や倒産の割合を「失敗率」と言い換えたものです。廃業には、経営者の引退による廃業も含まれます。倒産は、借金を返せなくなった状態を指します。
「脱サラした人が何割失敗したか」をそのまま示す公的な統計は、見当たりません。
数字だけで怖がる必要はありません。見るべきは、どんな形でつまずく人が多いのかという中身です。
1つ目の型は、業種の選び方の失敗です。
先ほどの調査では、開業した人の8割が、その業種で働いた経験を持っていました。経験のない分野で開業するのは少数派です。経験がなければ、仕事の段取りも、相場も、お客様がどこにいるのかも分かりません。それを開業してから一つずつ覚えることになります。
「楽そうだから」「流行っているから」「初期費用が安いから」。こうした理由で業種を選ぶと、開業してから次のような壁にぶつかりやすくなります。
同じ理由で参入する人が多く、価格の競争になる
仕事の品質を判断する目がなく、お客様の不満に気づけない
困ったときに相談できる同業の知り合いがいない
どの業種にも、その業種ならではの難しさがあります。外から「楽そう」に見える業種ほど、その難しさが見えにくいものです。
では、経験のない分野に進むのは無理なのかというと、そうではありません。
仕事に必要なことは、開業する前に覚えておいてください。 開業してから覚えようとすると、覚えるまでの期間の売上が立ちません。
特に、手に職をつける技能職は、技術の有無がそのまま仕事の質に出ます。技術を身につけてから独立すれば、1つ目の型のリスクは大きく下がります。
経験のない分野を選ぶなら、開業する前に、その業界で実際に働いている人から話を聞いてください。聞くことは、次の3つで十分です。
1つ目。仕事はどこから来ているのか
元請けからか、お客様から直接か、紹介か。仕事の出どころが分かれば、3つ目の型への備え方が見えてきます。
2つ目。一人前になるまで、どのくらいかかったか
技術を身につける期間の目安が分かれば、その間の生活費をいくら用意すればよいかも分かります。
3つ目。やってみて、想像と違ったことは何か
外から見えない難しさは、働いている人がいちばんよく知っています。「楽そう」に見えていた部分が、実はいちばん大変だったという話もよく出てきます。
内装の職人を育てるスクールのコラムでも、経験のないまま独立して失敗した例を紹介しています。経験のない分野に飛び込んで失敗した例に関して詳しく解説した記事はこちらです。
【実録】Aさんが内装職人として独立し、たった3ヶ月で廃業した話。Kitano壁紙スクールを選ばなかった“たった一つ”の後悔
2つ目の型は、お金のかけ方の失敗です。
先ほどの調査では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円でした。開業時に集めた資金は平均1,219万円で、その7割近くが借入です。
借入そのものが悪いわけではありません。ただ、大きく借りて始めた事業がうまくいかなかったとき、事業をやめても借金は残ります。
お金のかけ方は、次の2つに分けると見通しやすくなります。
初期投資
例:店舗の内装、設備、車両、加盟金
うまくいかなかったとき:取り戻しにくい。借入で払っていれば返済が残る
毎月の固定費
例:家賃、リース料、ロイヤリティ、人件費
うまくいかなかったとき:売上がなくても出ていく
店舗を構える事業や、設備を多く使う事業は、初期投資も固定費も大きくなりがちです。
一方、道具と技術で始められる仕事は、初期投資も固定費も小さく済むことが多くなります。うまくいかなかったときに、引き返しやすい形です。
もう1つ大切なのが、生活費です。
開業してすぐに、会社員時代と同じ収入が立つとは限りません。事業の資金とは別に、しばらく収入が少なくても暮らせるだけの生活費を用意しておくと、焦りから無理な仕事を受けずに済みます。
家族がいるなら、どのくらいの期間、収入が減っても暮らせるのかを、家族と一緒に数字で確かめておいてください。
3つ目の型は、仕事の確保の失敗です。
調査では、開業したあとの苦労のいちばんが「顧客・販路の開拓」でした。技術や商品があっても、お客様がいなければ売上は立ちません。
会社員のときは、仕事は会社が取ってきてくれました。独立すると、仕事を取ってくるのも自分の仕事になります。
開業してからお客様を探し始めると、次のようなことが起きやすくなります。
最初の数か月、ほとんど仕事がない
仕事を取るために、利益の出ない値段で受けてしまう
営業に時間を取られ、本業の技術を磨く時間がなくなる
仕事の確保の失敗を避けるには、独立する前に、仕事の出どころを決めておくことがいちばんです。
仕事の出どころには、次のような形があります。
前の勤務先
中身:独立後も取引先として仕事をもらう
気をつけること:退職前に、円満に話をつけておく
継続して仕事を出す会社
中身:協力業者として継続的に仕事を受ける
気をつけること:1社だけに頼りすぎない
知り合いや紹介
中身:人のつながりから仕事を受ける
気をつけること:量が読みにくい
自分で集める
中身:広告やネットでお客様を集める
気をつけること:費用と時間がかかる
独立したばかりの時期は、「継続して仕事を出してくれる先」があるかどうかで、収入の安定が大きく変わります。
前の勤務先から仕事をもらえる形は、独立直後の大きな支えになります。そのためには、辞め方が大切です。
退職の意思は、就業規則で決められた時期までに伝える
担当していた仕事の引き継ぎを、きちんと終える
就業規則に、退職後に同じ仕事をすることを制限する定めがないか確かめる
特に3つ目は見落としやすい点です。同じ業種で独立する場合、前の会社のお客様を連れていく形になると、関係がこじれることがあります。気になる定めがあれば、辞める前に会社と話し合っておくと、独立後の行き違いを防げます。
3つの型の裏には、脱サラを考える会社員が持ちやすい思い込みがあります。
思い込み1:技術があれば、仕事は自然に来る
技術は、仕事を受けたあとに品質で応えるためのものです。仕事を取ってくる力とは別物です。会社員のときは会社が仕事を取ってきてくれたので、この2つの違いに気づきにくいのです。技術を磨くのと同じくらい、仕事の出どころを先に考える必要があります。
思い込み2:好きなこと、楽そうなことなら続けられる
好きなことを仕事にするのは素敵なことです。ただ、好きであることと、お金をもらえる品質で続けられることは別です。楽そうに見える仕事ほど、始める人が多く、外から見えない難しさもあります。「好きだから」「楽そうだから」だけで業種を決めず、その仕事で実際に働く人の話を聞いてから選んでください。
思い込み3:最初にお金をかけたほうが、早く軌道に乗る
設備や広告に最初から大きくお金をかけると、見た目は早く整います。ただ、うまくいかなかったときに引き返しにくくなります。小さく始めて、仕事が増えてから必要なものを足していく順番のほうが、失敗したときの傷が浅く済みます。
3つの思い込みは、それぞれ仕事の確保、業種の選び方、お金のかけ方の型につながっています。
もう1つ、見落としやすいのが時間です。独立した直後は、本業の仕事に加えて、見積もり、請求、帳簿、お客様とのやり取りまで自分でこなすことになります。時間の使い方も、生活費と同じように見積もっておくと安心です。自分に当てはまるものがないか、一度立ち止まって確かめてみてください。
脱サラの行き先としてよく比べられる独立の形に、3つの型を当てはめてみます。どの形にも向き不向きがあり、どれが正解ということはありません。自分がどの型に弱いかを知るための目安になります。
店舗を構える(飲食・小売など)
業種の選び方で確かめること:その業種で働いた経験があるか
お金のかけ方で確かめること:物件・内装・設備の初期投資と、家賃などの固定費
仕事の確保で確かめること:立地と、開業前からのお客様づくり
加盟店として始める
業種の選び方で確かめること:本部の仕組みを自分が回せるか
お金のかけ方で確かめること:加盟金・保証金・毎月のロイヤリティ
仕事の確保で確かめること:本部の集客にどこまで頼れるか。契約の条件
在宅・ネットで始める
業種の選び方で確かめること:売れる技術や商品があるか
お金のかけ方で確かめること:初期投資は小さいことが多い
仕事の確保で確かめること:集客を自分でどう続けるか
技能職として独立する
業種の選び方で確かめること:技術を身につけているか
お金のかけ方で確かめること:道具・車両のほか、技術を身につける費用(講習の受講料など)。物件は要らないことが多い
仕事の確保で確かめること:仕事を出してくれる先があるか。その契約の条件
こうして並べると、独立の形によって、3つの型のどこに注意が要るかが違うことが分かります。
店舗を構える形は、お金のかけ方の型に特に注意が要ります。加盟店として始める形は、契約の条件をよく読むことが、お金のかけ方と仕事の確保の両方に効きます。在宅・ネットで始める形は、仕事の確保を自分で続けられるかが分かれ目です。技能職として独立する形は、技術を身につけることと、仕事を出してくれる先を決めることが中心になります。
3つの型と、手続き・家族について、辞める前に確かめておきたい項目をまとめました。手続きの期限は、このあとの「退職前後の手続き」で紹介します。すべてに「はい」と答えられなくても構いません。「いいえ」の項目が、これから準備すべきことです。
業種の選び方:その仕事を、お金をもらえる品質でこなせるか
業種の選び方:その業種で働いている人に、実際の話を聞いたか
業種の選び方:その仕事を、少なくとも一度は体験したか
お金のかけ方:開業費用と、そのうち借りるお金を数字で出したか
お金のかけ方:毎月の固定費が、売上がなくても何か月払えるか分かっているか
お金のかけ方:事業の資金と別に、生活費を確保しているか
仕事の確保:開業した月に仕事をくれる先が、1つでも決まっているか
仕事の確保:取引先を広げる方法を考えているか
手続き:年金・健康保険・開業届の期限を確かめたか
家族:家族と、収入が減る期間について話し合ったか
3つ目の「一度は体験したか」は、特に大切です。外から見て想像していた仕事と、実際にやってみた仕事は、違うことがよくあります。
脱サラを家族に話すときは、気持ちより先に数字を用意してください。
使う数字は、次の3つです。
毎月の生活費:家賃や住宅ローン、食費、光熱費、教育費、保険料に加え、会社を辞めたあとに自分で払う国民年金・国民健康保険の保険料も足す
収入が減る期間の見込み:開業してから、会社員時代に近い収入に戻るまでの期間を、少し長めに見積もる
必要な生活費の合計:毎月の生活費×収入が減る期間。そこから見込める事業の収入を引く
この合計を、事業の資金とは別に用意できるかどうかが、家族にとっていちばん知りたいことです。
国民年金や国民健康保険の保険料は、会社員のときに給料から引かれていた分と金額が変わることがあります。市区町村の窓口で見込みを確かめておくと、あとで慌てずに済みます。
脱サラでいちばん避けたいのは、うまくいっていないのに引き返せず、借金や生活の苦しさが膨らんでいくことです。
そうならないために、始める前に「ここまで来たら引き返す」という基準を決めておいてください。
期間:開業から決めた期間がたっても、生活費をまかなえる収入に届かなければ見直す
お金:用意した生活費が、決めた額を下回ったら見直す
借入:追加の借入はしない、または上限を決めておく
基準を決めておくと、うまくいっているときも、いっていないときも、落ち着いて判断できます。
見直すといっても、すぐにやめるだけが答えではありません。仕事の受け方を変える、取引先を広げる、いったん会社勤めをしながら続けるなど、形を変えて続ける道もあります。
判断の基準は、気持ちが揺れていないうちに決めておいてください。
失敗の型に手を打つのと並んで、退職前後の手続きも確かめておきます。手続きの漏れは、それだけで余計なお金や手間につながります。
年金
中身:厚生年金から国民年金へ切り替える
期限・注意点:退職した日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口へ
健康保険
中身:会社の健康保険を続ける(任意継続)か、国民健康保険に入る
期限・注意点:任意継続は、被保険者期間が2か月以上あり、退職後20日以内に申し出る
開業届
中身:税務署に個人事業の開業を届け出る
期限・注意点:所得税法第229条で、事業を始めた年の確定申告の期限までと定められている
青色申告の承認申請
中身:税の優遇を受けるための申請
期限・注意点:1月15日までに始めた場合はその年の3月15日まで。1月16日以後に始めた場合は、始めた日から2か月以内
開業届の期限は、法律の改正で見直されています。古い情報のまま「開業から1か月以内」と書かれたページもあるので、迷ったら税務署や国税庁の案内で確かめてください。
いきなり会社を辞めるのが不安なら、会社に在籍したまま、副業として小さく試す方法もあります。
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、副業・兼業を認める方向を示しています。ただし、実際に副業ができるかどうかは、勤め先の就業規則しだいです。始める前に、必ず会社の規則を確かめてください。
技能職の場合は、会社員のまま技術を学んでおく方法もあります。
たとえばKitano壁紙スクールのよくある質問では、仕事が休みの日に合わせて受講したい人について、1週間ずつ受ける人や、曜日を決めて受ける人もいると答えています。土日祝日は現場の都合で受けられない日もありますが、できる限り調整しているとのことです。
副業で試せば、仕事を受ける感覚や、自分に向いているかどうかを、収入を失わずに確かめられます。
ここまで何度か触れてきたとおり、「手に職をつけてから独立する」という道は、業種の選び方の型には技術を先に身につけることで、仕事の確保の型には修業先や協力先から仕事を受けることで備えられます。お金のかけ方の型では、物件が要らない分、店舗型より小さく始めやすい一方、技術を身につける費用がかかります。
ただし、技能職にも独自の難しさがあります。技術を身につけるまでの期間、体力、そして技術を身につけても仕事を出してくれる先がなければ収入が立たない点です。
技能職で独立するには、まず技術を身につける必要があります。
会社に入って見習い
中身:職人の会社に就職し、給料をもらいながら現場で学ぶ
気をつけること:一人前になるまでの期間が読みにくい
集中して学ぶ
中身:職業訓練校や民間のスクールで、期間を決めて学ぶ
気をつけること:仕事を休んだり辞めたりして通うと、学ぶ間の収入が減る。受講料がかかることもある
見習いの道は、収入を得ながら学べる一方で、独立するまでに年数がかかることが多くなります。集中して学ぶ道は、短い期間で技術を身につけられる一方で、その間の生活費の準備が必要です。
手に職で独立する道の一例として、内装(壁紙・床)の職人があります。
元電気工さん
屋外の電気工事から、安定した収入を求めて内装で独立するために受講しました。修了後はスクールを運営する会社とパートナー契約を結び、一人で現場を仕上げたり、講師と同じ現場に入ったりしています。今ではスクールの講師としても活躍しています。
元介護士さん
介護の仕事から、クロス職人への転身を目指して受講しました。15日間の講習の最後に修了試験に合格し、卒業を待たずに初仕事の依頼が入ったと紹介されています。
前職が営業職の20代の方
初日は「頭ではわかっていても体が思うように動きませんでした」と振り返っていました。最終日には、床材の施工まで自分の手でやり遂げています。
元自衛官の方
修了試験に合格したあと、独立開業サポートからパートナー契約へ進む方向で相談していると書かれています。
Kitano壁紙スクールには、技術の研修に加えて、開業の支援と、修了後のパートナー契約までを含む「独立開業サポート」があります。
研修を終えたあとは、パートナー契約のもとで実際の現場案件を担当し、収入を得ながら現場で技術を磨く形です。スクールの案内では、自分で営業しなくても仕事を受けられること(「営業なし」)と、加盟店が本部に払うような継続的な支払いがないこと(「ロイヤリティ0円」)を掲げています。単価の決め方、ほかの仕事と掛け持ちできるか、契約の期間や途中でやめるときの条件といった契約の条件は、申し込みの前の説明で確かめてください。
3つ目の型(仕事の確保)への備えとして、こうした形を選ぶ人もいます。加盟店の契約を読むときと同じ目で、条件を確かめてから選んでください。
コースは次のとおりです。15日間で基本を一通り身につけ、修了後は現場で場数を踏んで腕を上げていく前提のコースです。
パーフェクトコース
一人で施工を完結できる基本の習得。床の施工体験を含む
エキスパートコース
柄合わせやソフト巾木まで、現場で稼げる応用力
独立開業サポート
研修に加え、開業の支援と、修了後に実際の現場案件を担当するパートナー契約
各コースの詳細は、こちらをご覧ください。
最後に、脱サラに向いている人と、今は見送ったほうがよい人を整理します。
準備に時間をかけられる人
3つの型は、どれも準備で避けられます。辞める日を先に決めるより、準備が整った日を辞める日にできる人は、失敗しにくくなります。
数字で考えられる人
生活費、開業費用、月々の固定費。数字で見通しを立てられる人は、お金のかけ方で失敗しにくくなります。
学び続けられる人
独立すると、教えてくれる上司はいません。自分で学び、失敗を次に活かせる人が伸びます。
手に職で独立したい人は、仕事を体で覚えることをいとわない人
技能職の技術は、頭で理解するだけでは身につきません。失敗しながら手を動かし続けることをいとわない人は、技能職での独立に向いています。
生活費の見通しが立っていない人
収入が減る期間を乗り切れる見通しがないまま辞めると、焦りから判断を誤りやすくなります。生活費の準備が先です。
家族の理解が得られていない人
家族の協力は、独立した直後のいちばん苦しい時期を支えます。独立の準備より先に、家族と話し合う時間が要ります。
「会社が嫌だから」だけが理由の人
会社が嫌だという気持ちは、辞める理由にはなっても、独立して続ける理由にはなりにくいものです。「何をして、誰の役に立ちたいのか」を言葉にできてから動くほうが、結果として近道になります。
「脱サラした人の何割が成功したか」を示す公的な統計は見当たりません。くわしくは、この記事の「『脱サラの失敗率』という数字に注意」をご覧ください。
確率の数字より、失敗しやすい型(業種の選び方、お金のかけ方、仕事の確保)に手を打っているかどうかを確かめるほうが確実です。
開業費用は事業によって大きく違います。日本政策金融公庫の2025年度の調査では、開業費用の中央値は600万円でした。
一方で、道具と技術で始められる仕事や、在宅でできる仕事など、初期投資を小さく抑えられる事業もあります。金額の大小より、うまくいかなかったときに引き返せる形で始められるかどうかを確かめてください。
「この職種なら必ず成功する」という職種はありません。
経験を活かせる分野を選ぶか、経験のない分野なら開業前に技能を身につけておくことが、1つ目の失敗の型(業種の選び方)を避ける近道です。
準備に時間をかけられる人、数字で考えられる人、学び続けられる人が向いています。
反対に、生活費の見通しが立っていない人や、家族の理解が得られていない人は、準備が整うまで見送るほうが安全です。
決まった金額はありません。必要な金額は、開業費用と生活費の2つを分けて考えます。
日本政策金融公庫の2025年度の調査では、開業費用の平均は975万円でした。開業時に集めた資金は平均1,219万円で、そのうち自己資金は平均279万円です。ただし、開業費用は事業によって大きく違います。
生活費は、この記事の「家族と話すための、生活費の計算」の方法で、自分の家庭の数字を出してみてください。開業費用とは別に確保しておくのが基本です。
遅いとは言えません。
日本政策金融公庫の2025年度の調査では、開業時の平均年齢は43.9歳で、40歳代が36.9%といちばん多い層でした。
40代は、会社員として積んだ経験や人とのつながりを活かしやすい年代でもあります。同時に、家族や住宅ローンなど守るものも増える年代です。そのぶん、お金のかけ方の型でつまずくと影響が大きくなります。
計画で説明するのが基本です。
何の仕事で、いつから、どのくらいの収入を見込み、うまくいかなかったときはどうするのか。3つの型ごとに、どんな手を打っているのかを数字とともに伝えると、家族も判断しやすくなります。
戻る道はあります。
ただ、年齢や離れていた期間によって、前と同じ条件で戻れるとは限りません。だからこそ、借入を大きくしすぎない、生活費を別に確保するといった「引き返せる形」で始めることが大切です。
脱サラの失敗は、次の3つの型に分かれます。
業種の選び方:経験のない分野に、準備が足りないまま飛び込む
お金のかけ方:最初に大きなお金をかけすぎて、引き返せなくなる
仕事の確保:開業してからお客様を探し始める
どれも、会社を辞める前に手を打てます。
公的な調査でも、開業した人の多くは経験のある分野で開業し、開業後はお客様や仕事の確保に苦労していました。経験を先に身につけ、お金を小さく始め、仕事の出どころを先に決める。準備はこの順番で進めます。
手に職をつけて独立する道を考えているなら、まずは無料でできることから始めてみてください。
Kitano壁紙スクールでは、無料で試せる2つの入り口を用意しています。
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